文春『FF16は現実の問題を意識させるような素振りをしながらも、実際にはまったく取り組んでいない』

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1: 2023/07/09(日) 12:25:22.74 ID:RdTjZGao0

◇暗くて重い設定を軽く扱ってしまう物語の姿勢

 筆者が『FF16』で最も良いシーンだと思ったのは、少年時代の主人公がベアラー(奴隷)と遭遇したときのエピソードだ。

 あるとき、奴隷が果物を落としてしまい、それが主人公の足元へ転がってくる。奴隷の主人はそれを見て平謝りし、奴隷はただ命令に従って頭を下げるのである。主人公はその様子を見て、かわいそうだとは思いつつも慰めの言葉をかけるくらいしかできない。

 主人公は王族であり、奴隷たちの労働力の恩恵を最も受けている存在といっても過言ではない。奴隷を哀れに思っても、この時点では積極的に助ける必要はないのである。外国人技能実習生やエッセンシャルワーカーの苦労を知りつつも具体的な行動には至らない、われわれにも通じる残酷な状況をよく描けている。

 この描写はともすれば刺激的な皮肉で素晴らしいと思ったのだが、実は『FF16』にはその主人公の態度が全編にわたって染み渡っている。「見てみぬふり」をずっと続けるのだ。

 特に筆者が目をおおいたくなったのが、奴隷に関連するサブクエストである。

 ある親子は奴隷にモンスターをけしかけて殺して遊んでおり、それを主人公に非難されると「ベアラーはさっさと死んで餌になっていればいいんだ」などと言い出す。これ自体は奴隷の置かれている悲惨な状況を描くという意味で理解できるのだが、問題は話のオチだ。

◇あまりにも雑な勧善懲悪

 その後、モンスターは主人公によって討伐される。それに対して怒った親子は、また新たなモンスターを連れてこようとするものの、うまく制御できず逆に殺されてしまうという展開になるのである。

 これはあまりにも雑な勧善懲悪である。差別という問題は言うまでもなく非常に複雑で、差別する側が因果応報で氏ねばよいという単純な話ではない。因果応報のような考えも問題で、差別に少しでも踏み込むのであれば、ここまで簡単な答えを出すような筋書きにしてはならないだろう。

 あるいは、主人公は物語が進むとマザークリスタルを破壊するテロ行為を行う。当然ながら人民に大きな被害を与えるわけだが、これに対して主人公はあまり疑問を持たない。ゲーム内ではマザークリスタルが悪であるという話はあるものの、プレイヤーに詳しい説明はなく、なぜかそれが正しいという「空気」で話が進んでしまう。

 なお、本作に黒人は登場しない。KotakuやPC Gamerといった海外メディアはそれに対し批判の記事を出しており、後者は「歴史的『リアリズム』を口実に黒人キャラクターを排除した」とまで言っている。

 結局のところ、『FF16』は現実の問題を意識させるような素振りをしながらも、実際にはまったく取り組んでいない。それどころか、ざっくりと残酷に処理してしまうのだ。

 とはいえ、「このゲームはエンターテインメントであり、現実の問題を取り上げる必要はない」という主張もありえるだろうし、その意見も十分に理解できるだろう。では、エンターテインメントとしての『FF16』はどうあるのだろうか?

https://bunshun.jp/articles/-/64112?page=1


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Source: Y速報

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